阪神の髙橋遥人投手が、2026年の沢村賞に選ばれました。度重なるけがを乗り越え、初めて完走したシーズンで大活躍。16勝3敗、勝率.842は両リーグの規定投球回到達者でトップで、完投5、完封4もセ・リーグの規定到達者で最多です。
これだけでも十分すごいのですが、まごのてデータには1打席ずつの記録があります。勝ち星や防御率の「外側」から、髙橋投手のすごさを探してみました。
比べる相手は、2026年に規定投球回(143回)に達した投手です。セ・リーグは11人、両リーグでは22人でした。数字はすべてレギュラーシーズンのもので、敬遠の打席は除いています。
3ボールまでいかない
最初に注目したのは、ボールカウントです。
対戦した打席のうち、3ボールまでいった打席は10.8%。セ・リーグの規定到達者で最も低く、両リーグでも西武・隅田知一郎投手(10.0%)に次ぐ2番目でした。規定到達者の平均は16.1%なので、平均的な投手なら6打席に1回は3ボールになるところが、髙橋投手は9打席に1回ほどです。
2ボールまで広げても、到達したのは30.0%。DeNA・東克樹投手(28.4%)に次いで、セ・リーグでも両リーグでも2番目の少なさでした(規定平均37.9%)。
| 投手 | 2ボールまでいった打席 | 3ボールまでいった打席 |
|---|---|---|
| 髙橋遥人(阪神) | 30.0% | 10.8% |
| 規定投球回到達者の平均 | 37.9% | 16.1% |
※まごのてデータは「打席が決着したときのカウント」を持っています。カウントは途中で減らないので、決着したときに2ボール以上なら、途中で2ボールまでいったことになります。四球は3ボールまでいった打席として数えました。
ボールが先に増えないので、四球も出ません。与四球率0.96、奪三振を与四球で割ったK/BBは8.82で、どちらも両リーグの規定到達者で1位でした。
「追い込む割合」は、意外と1位ではない
では、ストライクを先に取って、どんどん追い込んでいたのか。2ストライクまでいった打席の割合を見ると、56.6%でセ・リーグ4位(両リーグ5位)でした。上位ですが、1位ではありません。
ここには打者側の事情もありそうです。ボールが先行しない投手に追い込まれると、打者はかなり苦しくなります。だから、追い込まれる前に打ちにいく。「追い込んで三振を取る」よりも、「ボール球を先に増やさないから、打者のほうが早く動かざるを得ない」。髙橋投手のカウントの数字からは、そんな構図が見えてきます。
6〜9番に、ほとんど打たれない
もう一つ目立ったのが、打順ごとの数字です。6〜9番の打者に対しては、被打率.143、被OPS.362。どちらもセ・リーグの規定到達者で最も低い数字でした。
被OPS.362というのは、6〜9番の打者がそろって「投手並み」に抑えられていた、と言ってもいいくらいの数字です。下位打線で息をつかせないから、イニングが短く終わる。先発1試合あたり平均6.91回(セ・リーグ1位)を投げられた理由の一つは、ここにありそうです。
ちなみに、立ち上がりの1〜3回も被打率.180・被OPS.435でセ・リーグ1位。序盤から相手の打線は手がかりをつかみにくかったようです。
1点差でさらに強くなる
もう一つ、場面別も見ておきます。1点差の場面での被打率は.147、被OPS.348で、どちらもセ・リーグ1位。セ・リーグの先発投手全体(.229/.627)と比べると、差ははっきりしています。
ゴロアウトとフライアウト(ライナーのアウトを含む)の比は1.81(セ・リーグ1位)。一塁に走者がいて無死か1死という場面で併殺打を打たせた割合も12.1%(セ・リーグ1位)でした。走者を出しても、ゴロで一気に片づける。1点差での強さとつながる数字です。
点を取ってもらった直後の回を、三者凡退で返す
ここからは、まごのてデータならではの数字です。サイトでは、味方が点を取った直後の回を「得点直後回」として、投手ごとに数えています。直前の攻撃で味方が先制した、引き離した、追いついた、逆転した……そのすぐ後の守りの回を、頭から任された回数です。
「点を取った直後こそ、すぐに取り返されないように」。野球ではよく言われることですが、それを数字で見られるようにしたものです。
2026年、髙橋投手が得点直後回のマウンドに上がったのは39度。セ・リーグの規定投球回到達者で最多でした。そして、そのうち19度を三者凡退で終えています。この19度は、両リーグの規定到達者22人の中で一番多い数字です。
| 投手 | 得点直後回 | 三者凡退 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 髙橋遥人(阪神) | 39 | 19 | 48.7% |
| 村上頌樹(阪神) | 36 | 18 | 50.0% |
| 東克樹(DeNA) | 37 | 18 | 48.6% |
| 大野雄大(中日) | 33 | 17 | 51.5% |
| 早川隆久(楽天) | 33 | 17 | 51.5% |
両リーグの規定到達者22人を合わせると37.4%で、髙橋投手は得点直後回のほぼ半分を三者凡退で片づけていたことになります。味方が攻撃で作った流れを、そのまま次の攻撃に渡す。前の節で見た「ボールが先行しない」投球が、ここでも効いているように見えます。
直前の攻撃の中身で分けると、次のとおりです。
| 直前の味方の攻撃 | 回数 | 無失点 | 三者凡退 |
|---|---|---|---|
| 先制した | 18 | 15 | 9 |
| 引き離した | 17 | 12 | 8 |
| 追いついた | 2 | 2 | 0 |
| 逆転した | 2 | 2 | 2 |
追いついた直後、逆転した直後の4度は、すべて無失点。チームが主導権を奪い返した直後に、すぐ流れを渡してしまうことは一度もありませんでした。
なお、得点直後回を無失点で終えた割合で見ると79.5%で、セ・リーグの規定到達者の平均(80.1%)並みです。点を取られた8回は、すべて「先制した」「引き離した」直後でした。
サイトで探せるデータ
ここで紹介した数字の多くは、髙橋投手の個人ページの「条件別レポート」で確かめられます。「表示切替」を「打席詳細」にすると、「ボールカウント」「打順」「点差」などのカードが並びます。
得点直後回は、阪神の投手ページで表の上の「表示列切替」から「得点後分析」をオンにすると、「得点直後回」「得点直後回の失点回数」「得点直後回の失点計」「得点直後防御率」の列が出ます。1登板ずつの行なので、髙橋投手の名前で絞り込めば、どの試合で何回任されたかを順に追えます(三者凡退の回数と、直前の攻撃ごとの内訳は、今回の記事のためにデータから数えたものです)。

ボールカウントのカードは「決着したときのカウント」ごとの成績なので、3ボールのカウント(3-0、3-1、3-2)で決着した打席がどれだけ少ないかが分かります。各行の「詳細」から全打席ページへ飛べば、左のフィルターパネルと組み合わせて、1打席ずつ確かめることもできます。
